乃木オタのわたしが私立恵比寿中学を好きになった話。

 

わたしは私立恵比寿中学のことを、何も知らなかった。

略称は”エビ中”、スタダ、ももクロの妹分――その程度の、浅すぎるにもほどがある知識量。
一つだけ、好きな曲があった。インターネット上の知り合いに「歌詞が良いから」と紹介された『誘惑したいや』。

勧められて早速、ネットで検索して歌詞を読んだ。片思いを歌った曲なのだろうけれど、その感情を「誘惑したいや」と表現しているのが気に入って、LINE MUSICでお金を払って曲を買って聴いた。(この頃はまだエビ中は課金制で、定額ラインナップには入っていなかった。この件については後述)

私はあなたの手で 羽ばたいていたい

それでも、最後のキラーフレーズのソロを歌っている子が誰かなんて気にならなかった*1。良曲は良曲としても、それを歌っている”私立恵比寿中学”に興味を抱くほど、イヤフォンから聴こえてくる彼女たちの歌声に興味は惹かれなかったのだ。何人居るのか分からないその声は、私の耳にはほとんど同じに聴こえていた。(今となってはもう聴こえないけれど)
 

 

月日は流れる。
『誘惑したいや』は、依然としてよく聴いていた。乃木坂にもこんな曲がほしいわあ……と乃木オタ並感を抱きながら、シャッフルで流れてきたら絶対に飛ばさない程度には気に入っていた。

LINE MUSICは、LINEが提供している定額制の音楽配信サービス(サブスクリプション型/通称サブスク)だ。友人に勧められてお試し加入して以来、無料期間を過ぎても使い続けている。これが非常に便利だ。
月々1000円以下のお金(学生はもっと安いらしい)で、好きな曲を無料でいくつでも聴くことができる。(日本語が破綻しているけれど、感覚的にはそんな感じ)

ちょっと気になるな、くらいの曲も、大抵のものはすぐに聴ける。LINE MUSICのお陰で好きなアーティストも増えた。Awesome City Clubとか、フレンズとか。
大抵の、と言ったのはアーティストや楽曲によってはプラスアルファのお金を出さなければいけないものもあって、そういう類だ。『誘惑したいや』はまさにそうだった。
私の好きな乃木坂や欅・けやき坂なんかは、凄く恵まれている。CD発売日よりも前に全曲解禁になるのはすごい。ちゃんと儲かってんのかなとか思う。(いや絶対どこかで儲かっているのだろう)
毎週水曜日あたりになると様々なアーティストの新曲がずらずらと入ってくるので、水曜日はアプリを開くのがたのしみだったりする。TSUTAYAにはもうしばらく行っていない。

 

 

2018年5月23日、椎名林檎のトリビュートアルバム、『アダムとイヴの林檎』が発売された。
追って同27日から、椎名林檎の楽曲がLINE MUSICを含む様々なサブスクにて全曲配信が開始される。

高校大学と軽音楽部に所属して林檎・事変は嗜んできた程度に椎名林檎が好きだったので、すぐに色々とダウンロードした。トリビュートアルバムの方も、一緒にチェックしてみた。
「草野さんの正しい街とか絶対最高、宇多田の丸サなんて超贅沢、レキシの幸福論も良さそう、カエラのここでキスして! 世代~!」なんていう感想を抱きながら、トリビュートアルバムの特設サイトで参加アーティストと曲名を眺めていると、ふと目に留まる一行があった。

 

私立恵比寿中学 自由へ道連れ

 

私立恵比寿中学……えっ、”エビ中”!? あの、アイドルの……えっ、アイドルが林檎トリビュートに……?」

衝撃だった。女性アイドルと椎名林檎が結びつかなかったのだ。否、男性アイドルならば。SMAPTOKIOに楽曲提供した曲はどれも素晴らしかった。そういった、成熟したアイドルとのコラボレートならばすんなり納得していただろう。ただ、そうではなかった。


私立恵比寿中学。なんかメンバー全員”中学生”を自称しているグループ。エビ中。『誘惑したいや』を歌っている子たち――とりあえず聴いてみよう、と思った瞬間、3タップでそれは叶う。LINE MUSICのアプリを開き、TOP画面に表示されているトリビュートアルバムの宣伝バナーを押し、12曲目の『自由へ道連れ』の文字列を指で触った。

すぐにイントロが流れはじめた。原曲とは少し違うアレンジ、それでも原曲の形は殆ど留められていた。でも原曲よりなんていうか、”元気”だな。そんなことをまず思った。それから耳に届いた、歌声。

 

超弩級のミサイル 逸る命 この現身は驀地(まっしぐら)

 

なんだこの歌声は…………!!!!!!


びっくりした、というより”びびった”。1フレーズ終わってまた次のフレーズ、代わるがわる聴こえてくるのは全く別人の歌声。同じになんて聴こえない。なにこれすごい。どれが誰かなんて分からないけれど、とにかくみんなうまくない??

びびりすぎて『自由へ道連れ』ばかりを、何度もずっと聴いていた。
一曲通してみると、紛うことなき”アイドルソング”になっていた。そのうえ原曲の良さを損なっていない。完璧だった。(個人差があると思うけれど、私にとっては)

大サビ前の「うー! はー!」の掛け声はライブで盛りあがりそうだなとか、原曲にはない「道連れしちゃうぞ」の台詞は誰が言ってるんだろうとか*2、出だしを歌ってるのは一体誰なんだとか、楽曲の”その先”が気になった。それは、『誘惑したいや』のときには生じなかった感情だった。


あれ、エビ中気になるな?? もっと知りたくない?? 別の曲も聴きたくない……???

 

それでも、私は知っていた。『誘惑したいや』を買っていたから。

エビ中の他の曲を聴きたければ、追加料金を払わなければいけない――いや、それでも良いと思えた。だってなんだか素晴らしいにおいしかしない。サビだけちょっとお試しで聴けるから、気になる曲があれば課金しよう。課金万歳。お金は偉大。そんなことを思いながらLINE MUSICの”私立恵比寿中学”のアーティストページを開いた、ら。

 

定額配信になってる…………!?!?!?!?

 

またびびった。曲名の横についていたはずの追加料金必須を示すアイコンが、全曲外れていたのだ。超びびった。びびりすぎて検索してみると、どうやら椎名林檎と時を同じくして定額配信がスタートしたらしい。え、ちょっと待って、すごくない? うまくない?

 

椎名林檎のトリビュートで『自由へ道連れ』を聴く

エビ中本体が気になる

エビ中の楽曲を聴く

エビ中ファンが増える

 

この図式がレコード会社側にもあったに違いない。正しくそれに引っ掛かった人間が私である。引っ掛かった、というのは語弊がある。寧ろ引っ掛けて頂いてありがとうございます。

片っ端からダウンロードした。いつの曲、どんな曲なんて知らぬまま、とりあえず沢山聴いた。えっ、エビ中良い曲めちゃくちゃあるじゃん。それが私の感想だった。

 

更に驚くべきことに、エビ中公式youtubeチャンネルが、なんと『自由へ道連れ』のライブ映像を公開してくれていたのである。そんなもん勿論見るわ、と軽い気持ちでページを開いた。

度肝を抜かれる、とはまさにこのことだった。
えっ、みんな生歌……??? CDも上手かったけれど、寧ろライブのほうが更にうまくない……??? よくない……!?!?!?

本当に驚いた。それからこのときにエビ中は6人組だということを認識して、早く顔と名前を一致させなければ、という使命感にかられた。


公式チャンネルの有能ぶりも止まらず、この他にもライブ映像をアップしてくれている。


いやあもう……すごくない? エビ中、やばくない? そんなアホみたいな感想が頭のなかを占拠した。だって、すごいしやばいんだもん。

 

早く覚えたい、と思っていたメンバーもすぐにおぼえられた。歌声の聞き分けも楽勝だった。6人が6人とも異なる個性の声だから。どうやら個性を潰さないように育てられているらしい。凄く良い。

それぞれの良さがきっちりあるのもすばらしい。
大人びて艶のある格好良さの真山りかさん、
アーティスティックさを感じる安本彩花さん、
アイドルらしい華のある声の星名美怜さん、
ストレートにうまい! と賞賛したい柏木ひなたさん、
良い意味で肩に力が入っていない心地よさの小林歌穂さん、
一生懸命でハートに響くソウルを感じる中山莉子さん。

上記は勿論もちろん主観だけれど、本当に一人ずつに重ならない良さがある。因みに個人的に一番好きな歌声は彩花ちゃん。気になっていた『自由へ道連れ』の歌いだしは彼女だった。最高でした好きです。

 

こうなってくると次は、”今”動いている”エビ中ちゃん”が見たいという欲が湧きあがってくる。もう既にエビ中ちゃん呼びだ。

しかし調べてみると、エビ中はテレビのレギュラー番組を持っていないらしい。まじかよ……ってなった。坂道グループで感覚が麻痺していた。恵まれているのだな、と再確認。

ただ、時を同じくして6月6日、エビ中が新曲を出した。これもうまいよね。全ての流れがカンペキ。

 

『でかどんでん』

自由へ道連れ』と比較すると、限りなくトリッキーなこの曲。”でかどんでん”ってそもそも何それ??? 状態。でも、それがよかった。
彼女たちは”キングオブ学芸会”を自称しているらしい。学芸会レベル、は勿論とっくに逸脱しているが、”学芸会”というワードに含まれる、正統派ではないエンタメアイドル感をこの曲でビシバシ感じた。ふり幅が凄いのに、どっちに振れても最高なの強い。

 

この曲を引っ提げて『おはスタ』に出るらしい、という情報をエビ中の公式ツイッターから入手して、小学生ぶりに見ました。おはスタ
画面のなかで動くエビ中ちゃんたち。はじめての”生”のエビ中だ~~~!! ってドキドキして、化粧をしていた手を途中で止めた。

なんというか、エネルギーが凄かった。全力で歌って踊って、すさまじかった。もっとみんなにみつかってほしい! って、こんな遅いタイミングで自分もみつけたばかりのくせして思ってしまった。


だから、TBSの音楽特番『音楽の日』に出演すると知ったときは超嬉しかった。だって音楽の日だよ? 中居くん司会のあれだよ? みんな見るじゃん!
……まあ、現実とは厳しいもので、『音楽の日』といえど出演時間は深夜帯だった。司会も中居くんではなくアナウンサーに代わっていた。

でもね、このときのパフォーマンスが、本当に素晴らしかったんですよ。
一人ひとりのエネルギーの強さ。一曲の、数分のパフォーマンスに魂がこめられているのが、がんがんに伝わってきた。圧倒されまくった。
一人ずつカメラに抜かれるときの、このフレーズこの瞬間は私だけの世界だと、堂々と胸を張って歌い踊る姿はとても、格好良かった。


そう、エビ中は格好良い。アイドルだから勿論かわいいのだけれど、それを上回る格好良さがそこには在った。

一体何人のひとが飛ばさずに見てくれたかな。欅・けやきを目的に録画した人たちもちゃんとエビ中まで見てくれてるといいな、なんてマジで謎目線すぎなんだけど本気で願ったりした。

 

私のドルオタのちゃんとした入り口は乃木坂で、そのまま乃木坂はずっと好きだけれど、同時にちょっと悔しくなったりもした。エビ中ちゃんたちの最高のパフォーマンスを見てしまったら。

もっとお腹に力入れて歌ってくれや(『いつでき』の未央奈(※推し)の死んだように歌うソロのモノマネbyみり愛ちゃんは好き)とか、生歌良いなあみんなだってやれば出来るのは知っているのに……とか。

でも、”アイドル”という括りで別物のグループを一緒くたに評価するのってナンセンスだよね。乃木坂は乃木坂の良さがあって、エビ中にはエビ中の良さがある。すぐにそう思い直したら、どっちもより一層好きになった。

 

エビ中は今年で結成9年目の、歴史のあるアイドルグループだ。そのなかで様々な出来事があったのは、人並みだけれど私も知っている。ただ私自身はその過去を、深く掘らなくてもいいかなと思っています。嬉しいことも悲しいことも、沢山の思い出を背負ってステージに立つ”今”の彼女たちを追っていきたい、それが『自由の道連れ』新規の私の気持ちです。あ、自由の道連れ新規の話をほぼbotにしかフォローされていないひとり言を投げるだけのアカウントでぽろっと呟いたら、エビ中ファミリーの先輩方に色々と教えて頂けたりして嬉しかったです。新規にあたたかいって良いね。ファンが新たなファンを創るって、そういうの実際あるんだろうなと思う。

 

だらだらと書いて何が言いたかったかというと、サブスクって凄くない? って話です。定額料金を支払っていれば大抵の曲は気軽に聴くことが出来て、そこからファン層の拡大に近づくんだなって身をもって知りました。

ただ絶対に直接お金を落としたいので、秋のツアーには絶対に(大事なことだから二重の強調)参戦するぞ! 9月のちゅうおんは日程が合わなくて行けない悲しみ……エビ中×生演奏なんて最高に決まってるのにね……円盤になったら買います……

ということで、早くハロプロもサブスク解禁してくれ~~~!

  

最後に、『誘惑したいや』『自由へ道連れ』の他に私が好きなエビ中ちゃんの楽曲をちょろっとだけ紹介するのを結びに代えさせていただきます。


・『響』

後藤まりこ嬢作詞のエモさ。エモいって便利で軽々しく使っちゃうし、私なんぞがエビ中にエモいっていうのはマジでおこがましいと思う……けれど言ってしまう。
「僕は運命と戦うことで『今』を奏でる」の歌詞の持つ強さ。

 

・『感情電車』

歌いだしのぽーちゃんの声がとても好き。大袈裟な抑揚をつけなくても心を伝えられる歌声って凄いなって思う。
エビ中にハマってすぐ友人とカラオケに行って「この曲良いから!」って歌った曲。めっちゃいいじゃんってすぐにその子もダウンロードしてくれた。

 

・『サドンデス』

ザ・ライブ映え。岡崎体育さんすげえ~!
「この曲のサビに関しては私がビーナス!」の言葉選びと美怜ちゃんのキャッチーな歌声のマッチ度合いが最高で最強。
「連れてってもらうんじゃなくてきっと連れてゆくからさ」って、エビ中ちゃんは「きっと」と歌っているけれどファンは皆「"絶対"連れてってくれるんだろうな」って思っているよなとか。その先のファンの思いまで見越して作詞されている気すらする。岡崎体育さんすげえ~~!!

 

その他にもたくさんたくさん好きな曲素敵な曲があるのですが、キリがないのでこの辺で!まずはサブスクでみんな聴いてくれよな~~!

 

*1:のちにひなたちゃんと知る。ファンの方がまとめた変遷を拝見したんですけど、成長度合いが分かりやすくてとても良かった

*2:これまたひなたちゃんだった。こういう台詞入りの曲って超アイドル感あって良いですよね。早く現場デビューして『ハイタテキ!』のりったんの「惚れたっ?」に「惚れた!!」って返す側の人間になりたい

 

<9/5 追記>
8月末に公開したこの記事、間違えて消してしまって呆然としていたのですが「ゴミ箱」に残っていた……ありがとうはてなブログ、ということで再度アップしました